■インドの食生活を知る

●インド・ビハール州からの報告

 

 

8月にインド、ビハール州を訪れました。目的は現地の教育関係のNGOを訪問し、活動を見学させてもらうと同時に、現地の方々と積極的に交流して関係を強化するためです。同時に現地の食生活についても調べてきました。今回はそれについて報告します。

 

訪問地;インド ビハール州 ジャムイ、ジャマルプール

 

滞在期間:2018年8月17日~27日

 

 

 

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ビハール州

・かつてお釈迦様が生まれ、生きた地域。仏教にゆかりのある地が州内各地に点在し、国内だけでなく日本をはじめとする仏教国からの観光客も訪れる。

 

・インドでも最貧州の一つとされる。各種社会指標を見ても後進性が指摘される州。

 

・今回訪問したJamui郊外から隣接するジャルカンド州、西ベンガル州、チャッティースガル州など、広範囲にわたってNaxalと呼ばれる国内テロ活動が蔓延する地域。

 

調査の仕方

・食材調査

市場で随時食材の種類と相場価格を調査した。

 

・聞き取り調査

交流のある現地の人から、家庭での食事の内容を聞き取り調査した。

 

・訪問調査

交流のある現地の人の家庭を訪問し、料理の仕方や食材、メニューについて調査した。

 

 

報告の前に、インドの食文化の特徴と背景について確認

 

・食について抑制的、禁欲を美徳とする観念→肉食に対する穢れの思考、新しい食物への警戒感

 

・食物の体内におけるフロー(消化)の重要視。アーユルヴェーダの影響?

 

 

・食物と健康への関心は一定程度ある。

 

食材の調査

ジャムイに滞在中、市場へ随時出かけて食材の調査を行った。

 

ジャムイで流通している食材(1Rs≒¥1.7

 

 

・流通している野菜(1Rs≒¥1.7

日本名

現地名

価格帯

玉ねぎ

ピャーズ

1030Rs /1kg

じゃがいも

アールー

1030Rs /1kg

トマト

タマタル

2050Rs /1kg

大根

ムーリー

2040Rs /1kg

カリフラワー

ゴービー

1030Rs /1kg

オクラ

ビンディー

1025Rs /1kg

ゴーヤ

カレーラ

1040Rs /1kg

きゅうり

キーラー

1030Rs /1kg

トウモロコシ

ブッタ、マカエ

1020Rs /1kg

大根の葉

ハラパッタ

大根についている

にんにく

ラッスン

1030Rs /1kg

なすび

ベーンガン

1030Rs /1kg

キャベツ

バンドゴービー

2030Rs / 1

ウリ

カクスイー

2030Rs /1kg

 

ネイヌア

2030Rs /1kg

 

クンデリ

2030Rs /1kg

枝豆

マタル

3050Rs /1kg

ニンジン

ガージャル

2030Rs /1kg

カボチャ

カッドゥー

3550Rs /1kg

トウガラシ

ミルチー

1020Rs /1kg

ショウガ

アドラク

1030Rs /1kg

 

 

・流通している果物(1Rs≒¥1.7

日本名

現地名

価格帯

りんご

セブ

100130Rs /1kg

みかん

ムサンビー

80100Rs /1kg

ライム

ニーンブー

4Rs/1

ざくろ

ヴェーダーナ

70130Rs /1kg

パイナップル

アナナス

60Rs/1

バナナ

ケーラー

4060Rs /1kg

マンゴー

アーム

60100Rs /1kg

パパイヤ

パピータ

80130Rs /1kg

 

 

・流通している主食

日本名

現地名

価格帯

チャーワル

50130Rs /1kg

小麦粉

マイダー

80120Rs /1kg

全粒粉

アーター

4080Rs /1kg

 

・流通している豆類

豆類

ダル

4080Rs /1kg

 

・流通している肉類

日本名

現地名

価格帯

鶏肉

ムルギー

130150Rs /1kg

山羊肉

マトン

450Rs /1kg

魚(淡水)

マチュリー

180Rs /1kg

アンダー

6Rs/

 

 


■市場調査から分かること

・野菜は総じて安く、果物は野菜の3~5倍くらい、肉類は鶏肉で7~8倍、マトン(山羊肉)に至っては10倍以上する。庶民感覚からすると、肉類は簡単に買えないことがわかる。

 

・果物の価格は一般的に高い。野菜の価格の7,8倍以上するので、庶民にとってはそれほど日常的な食べ物とは思えない。むしろビスケットはあちこちにあるドゥカーン(日用品を売る個人経営の雑貨店)で5Rsくらいから買えるので、子供のおやつとしてそちらのほうが一般的かもしれない。

 

聞き取り調査

 

訪問したNGOのスタッフ5名に、5日間(8/198/23)にわたって食事メニューの聞き取り調査を行った。

 

 

調査一例

Aman

間食

8/19

リティ、ダル

チャパティ2枚、サブジー(じゃがいも、トマト)

ライス、サブジー(キャベツ、じゃがいも)、ダル

チャイ3杯、ビスケット数枚

8/20

リティ、ダル

ライス、ダール、チャパティ2枚、サブジ(カリフラワー、じゃがいも)

チャパティ3枚、サブジー(ウリ)、キュウリのサラダ

チャイ3杯

8/21

プリー4枚、ダル

リティ、ダル(じゃがいも、豆)

ライス、ブジヤ(オクラ)、ダル

チャイ2杯、ラスグッラー(インドのお菓子)、パパイヤ

8/22

なし

ライス、パコラ(玉ねぎ)、ブジヤ(オクラ)、ダル

ライス、ダル、ブジヤ(苦瓜とトマト)

ゆでたまご2個、バナナ3本、チャイ4杯

8/23

チャパティ、サブジ(苦瓜)

チャパティ3枚、ブジヤ(じゃがいも、玉ねぎ)、

ライス、ダル、サブジー(茄子とトマト)

とうもろこし1本、チャイ2杯、ビスケット5枚

●聞き取り調査から分かったこと

 

インドの食事メニューは基本的にこのような構成になっている。主食と菜もの、豆スープが三つ巴となってインドの家庭料理は構成されていて、その日の状況に合わせて各要素が増えたり減ったりする。

 

 

■訪問調査

2018年8/23~8/24にかけて、ジャマルプール郊外の農村にあるサンジャイ氏の家庭を訪問した。目的は家庭における調理の実際を探るためである。

 

調査対象について

サンジャイ氏は当地のNGO、I-sakshamのスタッフであり、2児の父親である。ジャマルプールの郊外、マタディという村に家族9人で暮らしている。サンジャイ氏(32歳)のほかに母親(70歳)、妻(25歳)、息子(6歳)、娘(4歳)、弟(28歳)、弟の妻(25歳)、弟の娘2人(6歳と4歳)という家族構成。料理は二人の嫁が協力して行っているようだ。

 

 

朝食 昼食 夕食
1日目 リティ・チョーカー チャパティ・ダル・じゃがいものサブジ ライス・ダル・ゴーヤとトマトのサブジ

2日目

プーリー・ダル

 

チャパティ・玉ねぎとじゃがいものサブジ ライス・ダル・じゃがいものサブジ

リティ2つとチョーカー(スープ状のもの)、左の粉状のものはサットゥー(豆のパウダー)。これもチョーカーに混ぜて食べる。
リティ2つとチョーカー(スープ状のもの)、左の粉状のものはサットゥー(豆のパウダー)。これもチョーカーに混ぜて食べる。
サンジャイ氏の息子(6歳)はリティを1個食べた。
サンジャイ氏の息子(6歳)はリティを1個食べた。

 

■訪問調査を通じて気が付いた点

 

●一般的なインドでは、主食と多いかずのバランスが日本とは異なっていて、主食であるライスとチャパティの量が多いように感じた。これはサンジャイ氏の家庭だけではなく、食堂などで出てくる料理のバランスや他のインド人が食事しているのを見てもそう感じる。インド料理とは、スパイスで刺激的に味付けした野菜などで、大量の炭水化物を摂取するものではないか。

 

●ローティーは基本的に全粒粉(アーター)を使ったチャパティを食べる。アーターのほうが価格が安いことと、健康にいいという認識がある。

 

●料理にとても多くの油を使う。日本のように「油を引く」というよりは、100ml以上の油をドバっと入れる。また炒め物にしろ、揚げ物にしろ、油を切る習慣もない。

 

●野菜の嗜好性、偏向性がある。恐らくもっともよく使われる野菜はじゃがいも、次いで玉ねぎ、少し離れてトマトという順番ではないか。一方で葉物野菜が少ないと感じる。痛むのが早くて市場に出回りにくいのか、冷蔵庫がなくて保存がきかないせいなのか。現地の友人によると「好みの問題だ」ということだった。

 

●豆類への傾倒ぶりは相当ある。豆類をパウダーにしたサットゥーは主食代わりに食べられるほか、水に溶いて塩やスパイス、レモンなどで味付けをして飲んだりもする。またチャナダルとよばれるひよこ豆は、少し味付けしてスナックとしても大変人気がある。電車の車内では必ずと言っていいほどチャナダルのスナック売りが回ってくる。

 

●インドの多くは3世代に加えて兄弟家族も同居する大所帯の家族構成となっている。1つの家に10人前後の人が住むことが多い。そのせいで1回に作る料理の量も多くなる。

 

●冷蔵庫の普及率が低い。電気のインフラが不完全なことに加えて、電気代も安くない。都市部では冷蔵庫を持つ家庭もあるようだが、田舎ではまだまだ普及していない。このことは食材のストックの仕方に大きな影響を与えていると思われる。

 

 

●農村では独自に野菜を生産している農家が多いことから、市場に頼らない流通体系が存在する可能性がある。自家栽培→自家消費、

 

●味覚について、インパクトのある強い味が総じて好まれる。そのせいでスパイスはもとより、塩が多めに入れられることがある。また貧困層の料理ほど使用するスパイスの種類が少ないせいか、赤唐辛子の辛さがストレートに料理の味に反映されるように感じる。また塩と、チャイや果物のフレッシュジュース、インドのスイーツ類には多量の砂糖を入れる傾向にある。

 

●このビハール州から、西に隣接するU.P州の東部で見聞きしたことだが、家庭では男女が一緒に食事をとらない。正確には、料理が出来上がったら、最初に男性と子供が食べ、女性は男性たちが食べ終わってから食べ始める。そういう習慣がある。これは男尊女卑の思想を反映しているのか分からないが、そうした思想を培うもとになっているかもしれない。

 

●インドでも食の多様化が少しずつ進行している。チョウミン(焼きそば)、モモ、マギーヌードルなどのインスラント麺、西洋風パン(食パン))の普及が見られる。都会では外資系のファストフード(マクドナルド、ピザハット、ケンタッキーフライドチキンなど)も出店しているが、セットメニューが200Rs以上することも珍しくないので、利用客は上流層に限られている。

 

今後の調査方向、ポイント

 

・一人当たりのライス、チャパティを食べる量について

・料理の際に使う油の種類と量

・料理に使われる塩と砂糖の量について

・冷蔵庫の普及度合い

・料理に使われる野菜の種類と頻度、葉物野菜の浸透度合い

・伝統的なインド家庭料理から外れた、新しいメニューの普及度合い。

 

 

 


インド人の食生活と健康状態を知り、両者の関係を解く。そして食育プログラムにフィードバックする。インドは多様な民族、多様な文化で成り立っている。また貧富、宗教、都市と農村などによって生活スタイルが異なり、食生活もさまざま。インド人のリアルな食文化に近づくために、どのように行動すればいいか?

 

・アーユルヴェーダをはじめとするインドの食文化の勉強

・インドにおける食材と料理の仕方について知見を深める

・日本の食品標準成分表に類する食品成分データの収集

・実地調査(インドの家庭において)

・インド人の健康状況について、統計など資料面から

・インド人の健康状態について実地調査(方法は?)

 

 

このページでの提起されている、「インドの食生活を知る」について、ご意見をお寄せください。

 

 

 

コメント: 2
  • #2

    ごはん (木曜日, 06 8月 2020 00:52)

    昔は日本でもおかずよりお米をたくさん食べてました。米(玄米)>大豆(味噌、豆腐)>野菜(漬物)の順です。

  • #1

    佐竹 (木曜日, 05 7月 2018 09:14)

    インド勉強会の佐竹です。皆様からのアドバイスにより事業をブラッシュアップしていきますので、どうぞご意見をお寄せください。名前の欄はハンドルネームでも結構です。